LOGIN第32話 黙って殴られるのは美月の流儀じゃない、反撃の一発
「じゃあ、結婚式はいつ?親友、もし式を挙げるときは、私をブライズメイドにしてくれない?」
美月は親友の燃えるような視線を受けて、思わず額に手をやりたくなった。
「……結婚式はまだ決めてないの。今はまだ考えてないし、急ぐこともない。でも、私がウェディングドレスを着るときは、必ずあなたをブライズメイドにするから。」
佳奈は嬉しさのあまり、目を一段と輝かせた。
「じゃあ、そう決まりね。そういえば、あんたたち二人……昔は……」
「昔はただの他人で、深い付き合いもなかったし、曖昧な関係なんて一切なかった。昨日までは、会話を交わしたことすら二回もなかったの。ちょうど昨夜たまたま出会って、彼には妻が必要で
第272話 グッズ化権を買いたいという人が現れた「ちょっと待って。バッグを置いてくるわ」美月はまだバッグを手に提げていた。「それなら、私が書類を持って行きます」「じゃあ、お願い」美月は自分のオフィスへ向かった。彼女が席に着いたばかりのところへ、大沢が書類を持って入ってきた。「社長、こちら、すべてご署名いただきたい書類です」美月は大沢にかなり大きな権限を任せていた。特別な事情がない限り、普段の業務は大沢の署名だけで済む。美月は書類に目を通してからペンを手に取り、一枚ずつ署名していった。書類は三通だけだった。署名を終えると、彼女は大沢に返した。「そういえば、報告があるって言ってたわよね? 何のこと?」美月は少し離れたところにあるソファを指し、座って話すよう促した。大沢はソファまで歩いていき、腰を下ろした。「社長、うちのスマホゲームをグッズ化したいという人から連絡がありました」美月は少し意外そうな顔をした。「つまり、うちのゲームの商品化権を買いたい人がいるってこと?」大沢はうなずいた。「はい! クローズドβテストの盛況ぶりを見れば、このゲームに大きな市場性があるのは明らかです。商才と資金力のある人なら、当然このチャンスを見逃しません」美月は少し考えてから尋ねた。
第271話 おばあさまと散歩「美月ちゃん、まずは朝ごはんね。ダイニングへ行きましょう。今朝はいつもより品数を増やしていろいろ用意させたから、たくさん食べてちょうだい。やっぱり少し痩せすぎよ」美月は思わず言葉を失った。「……」――自分、そんなに痩せてる?いや、そんなはずない。つくべきところにはちゃんとついてるし。こんなに優しい姑がいるなら、結婚した甲斐もあるってもんだ。三人はダイニングへ向かった。「おじいさまとお父さんは? お呼びして、一緒に食べませんか?」雅はすぐに答えた。「おじいさまは朝早く散歩に出かけて、もう朝ごはんを済ませたの。お父さんは今日出張で、六時に出発したから。今朝は私たち三人だけよ」美月はそれを聞くと、それ以上は何も言わなかった。神崎家の朝食は品数が多く、栄養バランスもよかった。「美月ちゃん、遠慮せずにいっぱい食べてね。どれも体にいいものばかりよ」「はい!」美月はうなずいた。「お母さん、自分で取りますから」三人で朝食を終えても、美月はすぐには出かけなかった。会社までは車で三、四十分ほどだ。八時過ぎに出れば、十分間に合うはずだ。「おばあさま、少し一緒にお散歩しませんか?」清子はぱっと顔をほころばせた。「ええ、行きましょう!」
第270話 嫁を独り占めしたい!美月は、本当に何と言えばいいのか分からなかった。蓮がまた延々と喋りそうだったので、彼女は慌てて話題を変えた。「私、しばらくこっちに泊まるわ」「しばらく泊まるのはいいさ。俺が帰ったら迎えに行くから、一緒に帰ろうな」――やはり、二人きりで過ごすのが一番。だって、そっちでは……美月を独り占めできないからなじいさんとばあさんに二人の時間を取られるだけでも厄介なのに、何より怖いのは母さんだ。おそらく、美月の時間の八割は彼女に持っていかれるだろう。そんな状況で、二人きりで過ごす時間なんて、どこにあるんだ。だから、そっちに住むなんて絶対に嫌だ。せいぜい、一、二か月に一、二度泊まるくらいでいい。「分かったわ!」美月はあえて反論しなかった。――帰ってきてから、また話せばいい。どこに泊まっても構わない。神崎家の方々は、皆よくしてくれる!だからこっちにいても、少しも居心地が悪くない。それでも、相変わらずお姫様のような暮らしだ。美月があっさり了承したので、蓮は当然、上機嫌になった。「こっちの用事が片付くまで、あと三、四日はかかりそうだ。この数日、一人で寝かせることになって悪いな」美月は思わず言葉を失った。「&helli
第269話 俺の名誉を傷つけるな!翔太のこわばった顔には、驚きと信じられないという思いがありありと浮かんでいた。――今、何を聞いた?いや、俺のあの澄んだ笑い声が……どうして「ゲラゲラ」なんて言われなきゃならないんだ?この夫婦、いったいどうなってるんだ?二人とも……俺を人間扱いする気がないのか?この二人がなぜ惹かれ合い、夫婦になったのかようやく分かった。要するに、二人とも根っからの悪人夫婦ってわけだ。どうしてこんなに遠慮なく、俺の純粋な心を傷つけられるんだ?まったく、ひどすぎる!「うわぁ……美月、蓮に悪い影響を受けないでくださいよ!」――昔はあんなに純真で優しい人だったのに!俺を見ると、恥ずかしそうに顔を赤らめて、おどおどしてたのに。それが今じゃ……こんな言葉まで口にするんだから。絶対、蓮の野郎に悪い影響を受けたに違いない!そのとき、蓮が翔太の座席の背もたれを蹴り、声を張り上げた。「おい、ちゃんと話せよ! 俺はこんなに根っからの善人なんだぞ? それなのに、なんで俺が美月に悪い影響を与えたってことになるんだよ! これ以上俺の名誉を傷つけるなら、ぶん殴るぞ!」「お前のあの笑い声、『ゲラゲラ』でぴったりだろ? 何が悪いんだよ。美月が心優しいから、わざわざオブラートに包んで言ってやったんだ。なのに、まだ不満なのか?」
第268話 さっきからゲラゲラ笑ってる今回は美月のほうからビデオ通話をかけた。蓮はすぐに応答した。「さっきまで風呂に入ってたのか?」美月は頷いた。「ええ」ふと、画面の背景がいつもと違うことに気づいた。「車の中なの? どこへ行くの?」「今、クラブに向かってるところだ」――クラブへ向かってるってことは、何か用事があるんだろう。それに、車内には蓮一人じゃないみたいだ。「じゃあ、先に用事を済ませて。もう切るわね……」その言葉に、蓮は慌てた。「待って! 切らないでくれよ。別に忙しくないから。クラブまであと三十分はあるし、ゆっくり話せるだろ。ちょうど車の中で暇だったんだ」我ながら賢い選択だったと、蓮は内心ほくそ笑んだ。――今日は運転を人に任せておいて正解だった。自分でハンドルを握っていたら、こんなふうに美月とゆっくりビデオ通話なんてできなかっただろう。すると、前の座席にいた翔太が、突然口を挟んだ。「美月、もう少し蓮に付き合ってやってくれよ。さっきから何度も電話してたんだ。出てもらえないから、抜け殻みたいになってたんだぜ」蓮は曲げていた足を、前の座席に向かって勢いよく蹴り出した。「うるせえ、黙ってろ! 俺が嫁とビデオ通話してるんだ。部外者がいちいち口を挟むな!」&nb
第267話 みんな忙しいんだから!「はい、もうおしまい! みんな忙しいのよ。また今度ね」蓮が何か言う間もなく、雅はさっさと通話を切ってしまった。真っ暗になった画面を見つめる蓮の胸に、やりきれない怒りが込み上げてきた。――悔しい。可愛い嫁は将棋に夢中で、自分のことなどまるで気にかけてくれないなんて。そのうえ、母親にまで通話を切られてしまった。美月とはまだほんの数言しか話せていないというのに。蓮は大きく息を吐くと、立ち上がって浴室へ向かった……一方、美月は総一郎とさらに二局指したところで、雅に声をかけられた。「もうこの辺にしましょう。時間も遅いし、美月ちゃんは今日一日仕事だったんでしょ? しかも、こんなに長く将棋に付き合ってくれたんだから、疲れたわよね。また今度にしましょう」「私は大丈夫です。疲れていませんよ」美月は本当に気にしていなかった。初心者相手なら、長く指していると飽きるかもしれない。でも、強い人との対局は違う。指せば指すほど楽しくなるものだ。義父がまだ続けたいのなら、美月も喜んで付き合うつもりだった。総一郎は少し名残惜しそうだったが、それでも将棋盤を片付け始めた。「続きは明日にしよう」「はい!」美月は素直に頷いた。将棋を片付け終えると、祖父母もそろそろ休むことにした。二人にとっては、もう十分に夜更かしした時間だった。